第6編 財務諸表の作成

目  次

	第1章 財務諸表の種類

第2章 貸借対照表

第3章 損益計算書

第4章 株主資本等変動計算書および附属明細書(表)
第1節 株主資本等変動計算書
第2節 財務諸表附属明細書(表)

第5章 関係比率による分析
第1節 収益性指標
第2節 活動性の指標
第3節 安定性の指標
第4節 総合的観点
第5節 資本と利益の関係


第1章 財務諸表の種類

 決算にあたって、企業が外部の利害関係者に対して報告する計算書類を「財務諸表(financial statemente)」といい、複式簿記によって作成された会計帳簿が、その情報の基礎を形成しています。
 財務諸表には、次の4つのものが挙げられます。

1.貸借対照表2.損益計算書3.株主資本等変動計算書4.附属明細書(表)

会社法では貸借対照表損益計算書株主資本等変動計算書(事業報告)附属明細書
証券取引法では貸借対照表損益計算書株主資本等変動計算書キャッシュ・フロー計算書附属明細表


第2章 貸借対照表

(会社法/会社計算規則に基づく「貸借対照表」)変更前


第3章 損益計算書

(会社法/会社計算規則に基づく「損益計算書」)変更前


第4章 株主資本等変動計算書および附属明細書(表)

第1節 株主資本等変動計算書

変更前  当期純利益に前期繰越利益を加算して算出される「当期未処分利益」の処分内容を明らかにするために、「利益処分計算書」が作成されます。
 なお、作成日付は、株主総会の日となっています。利益処分は、商法規定に基づき取締役が定時株主総会に処分案を提出し、承認を求める手続により行われることとなっています。なお、利益処分はその性質から、(1)株主配当・役員賞与などの形となって「社外流出」する部分と、(2)利益準備金・任意積立金および次期繰越利益金の形で「内部留保」される部分とに分けられます。

 なお、会社法は「事業報告」の作成・報告をも義務づけています。

第2節 財務諸表附属明細書(表)

 損益計算書・貸借対照表の記載を補足するために作成される。(有価証券明細書、長期借入金明細書、減価償却費明細書など)


第5章 関係比率による分析

 2期間のA社の決算書を集約すると以下のようになっているとして、適当な経営分析手法によって業績の推移を分析してみます。


 主な分析比率は、つぎの通りです。

経営の成果を知るための指標は、通常、収益性、活動性、安全(安定)性として分析されています。

第1節 収益性指標(損益計算書より把握)

 粗利益率(売上総利益率)は、少し2期に良くなっている程度ですが、営業利益率・純利益率はかなり良くなってきています。営業費の相対的な効率化が、進んだ結果とみられます。また、不良在庫の一掃により、利益増加をもたらしたとも考えられます。

第2節 活動性の指標(損益計算書・貸借対照表より把握)

 業種によって一概にはいえませんが、相対的に過剰であった在庫を大々的に減少させ、資本の効果的活用を図ったものと見られ、総資本も回転が増しています。これが、一方では利益の増加に貢献し、他方では資金に余裕をもたらして、好ましい結果を招来したものと判断されます。しかし、商品在庫の異常な低下は、少し気になりますので、より詳細な分析が必要となります。

第3節 安定性の指標(貸借対照表より把握)

 この観点から見る限り、格段の改善があります。とくに、当座比率が100%を上回って、余裕資金が かなり生じてきたことを物語っています。また、不良固定資産の処分も行われたようです。それによって、負債の返済も行われたとみられます。

第4節 総合的観点

 総じていえば、収益性、活動性、安全(安定)性の面で、第2期はかなりの改善が行われ、業績が向上したといえますが、商品在庫の点で、多少、気がかりが残っています。
 また、金利負担率は第1期(130*8,000=1.6%)、第2期(166*9,135=1.8%)とともに、2%に達せず、普通と思われる。これは無駄な金融を行ったり、高利の資金を導入していないことを示すものですから、この面からの心配はないと判断されます。

第5節 資本と利益の関係(資本効率の測定)

 通産省産業合理化審議会では、「経営方針遂行のための利益計画」においては、経営の目的利益率の設定に関して「利益目標の示し方としては、総資本利益率が企業全体を包括的に見るのに最も適当ですが、経営者の内部目的の重点としては、直接経営活動のために投入された資本の効率を示す経営資本利益率をもって示すのが一般に適当です」と述べています。
 この場合、経営資本とは、総資本のうち実際に営業に役立っている資本であって、単に利子配当を目的とする投資、未稼働の建物に投下した資本などを除外するものですが、遊休設備は含むものとされています。ここでいう「総資本利益率」とは、企業における経営活動の指標として、投下資本の効率の測定を総収益と総費用との差額で、期間純利益との関係から把握しようとするものであり、個別資本が一定期間に運動した成果をしめしています。
 もっともここで算定の基礎となります資本、利益の概念としては、それぞれ総資本、経営資本、自己資本、資本金および営業利益、経営利益、当期純利益、未処分利益等が考えられるのであり、それぞれの組合せによる利益率が算出されることになります。  通産省産業合理化審議会の示す「総資本利益率」をもって企業全体の包括的成果の把握に役立てようとする考え方は、経営活動の成果、政策の統一目標としての総資本利益率が、基本的には二つの関連要素より構成されていることを示しています。
 売上高利益率と総資本回転率がそれであり、両者、もしくはそのどちらかの効率を追求することになります。この場合、売上高利益率は、その内に総原価と売上高との関係比率である売上高原価率をもつことになります。
 このようにして、総資本利益率を経営活動における資本効率の最終的目標数値とすることは、結果において、企業における資本と売上高と売上利益および総原価の相関関係の分析をおこなうということになります。
 経営成果の統一目標としての「総資本利益率」は、売上利益を総資本で除することによって算出されます。この式を分解すると次のようになります。


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